榛原日誌

榛原トリコの日々のクロッキー。

11月27日

思えば朝からみぞおちの辺りになにか石のような不快感はあり、眠気に苛まれていたのでそもそも調子が悪かったのだろう。博物館に行ってから、どうもなにかが不安定だ。

 

露悪的な現代アートは苦手なのだけれどもどうしても観なくてはいけないものがあって横浜の展覧会に赴く。とても素晴らしかったがやはり具合が悪くなり、この具合の悪さは空腹からきているものかもしれないと、中華街に水餃子を食べに行き、店を出た後腹具合が不安な感じになって、中国茶屋に入って注文をし、茶器が運ばれて来る合間にトイレに3回行って、優雅にお茶を煎れてもらっている合間にどんどん身体が折れて、冷や汗がドバっと出たことによって全身にまとった発汗で暖まる素材の繊維が一気に熱を帯びてますますどうにもならなくなり、いつもと違う鞄だったので腹の薬も入っておらず、これはもしかしたら久しぶりに倒れてしまうかもわからない、と、そんな場合ではないのに聞香杯で香りを嗅いではあいい匂いですなどと返事をし、煎れたての中国茶をとりあえずひとくち飲むと、少し落ち着いたので、一煎目を全て飲んでから伝票を掴んで外に出る。風にあたると急に楽になったので、歩いて港を目指した。

ベンチで海を眺めながら、本当は横になりたかった。横になって少し眠りさえすれば、すぐに回復するだろう。浜辺ならば寝転んでいても誰もとがめないのにと切なくなった。切なくなったのは、地元恋しさと、自分の安心できる行動範囲が年々円を描くように小さく小さくなっているように思えたからだ。身体の芯がじーんと鳴り続けていた。

 

じーんが小さくなってから電車に乗り、迎えの時間に間に合わなそうだったので18時に延長し、17:40頃迎えに行くと、娘は先生の膝の上で絵本を読んでもらっていた。

暗い園庭を手をつないで歩き、「今日なんで18時だったの?」と聞かれた。

「お母さん横浜行ってたら具合悪くなっちゃったんだよ、ごめんね」と答えると、「いいな、ママだけどっか行って」と、珍しいことを言う。

「でもあなた来ても面白くないところにしか行ってないよ」

「私もどこかに行きたい」

「じゃあ土日でどこかに行こっか」

「違う、幼稚園が終った後に行きたいの」

「どこかってどこ?」

「ディズニーランド」

「それは無理だな」

「タリーズとかショッピングモールとか」
「それなら今度ね」

17時までは同じクラスの女の子とおうちごっこをしていて楽しかったんだーと言う娘を自転車の後部座席に乗せる、と、でも、その子が帰った後は、預かりのどの女の子に「いーれーて」って言っても「ヤーダーヨ」と言われた、と、唇を尖らせうなだれた。人数決まった遊びだからもう入れられない、という理由だったり、いつも「ヤーダーヨ」という子だったり、理由はわからなかったり。外で遊ぶ子もいなかったので、先生に、この本読んでと言って読んでもらっていたのだそうだ。

以前も似たようなことがあって、それはやっぱり金曜日に起こり、子どもたちも金曜日には疲れが出て少し心が荒れるのだろうか。もちろん娘がなにかやらかした結果なのかもわからない。子どもたちの間のことは、どこまで踏み込んでいいのだろう。

後部座席でうなだれる娘の両手を握ると、ついに「預かり保育お休みしたい」と言われた。
「一回でいいから、お迎えにしてほしい。だって、ずーっとずーっとずーっと預かり保育にいるんだもん。預かり保育も好きだけど、家で、TV観たり、ママと折り紙したり、神経衰弱がしたい」

お迎え、は、預かり保育なしで迎えに来ることで、もう年末に向けて休ませることはかなり厳しい上、代休も冬休み中も通わせる予定だ。
「一回って、週に一回?月に一回?」

「月に一回」

「そのくらいなら出来るけど…でも今年はもう無理かも…」

「えー」

「何曜日がいいの?月、火は無理だよ」

「金曜」

やはり金曜。

「じゃあ、毎日18時で金曜日休むのと、毎日16時で全部行くのだったらどっちがいいの」

「毎日18時でも一回休むのがいい」

 

こんなことがあった今日だから言っているのかもわからない。
冬は暗くなるのが早くて、外遊びもしにくいからかもわからない。
けれどそこまで言うのなら、とりあえず、どこか1日、お迎えの日を作れるようにどうにかしよう、近日中に、と、手帳を睨む。

 

母に電話。検査はなんともなかったらしい。ホッとする。
不調を改善するために運動をするよう言われたと言い、運動ったって、駅まで歩くのだって疲れちゃうのに無理、と母はこぼし、少し慌てるように、でも無理って言っててもやらないとね、とかぶせた。
そうだね、無理っていうと、やれないからね、むずかしいだろうけどがんばって、と言って、電話を切る。

母の、すっかり老婆然とした声を思い返しながら、駅までの道は徒歩7分なことを思う。自分と同じ活動量計をプレゼントしようかなぁ、使ってくれるかしらん、とも考える。